DVノンリニアへの道

 古い話ですが、98年7月の末、嶋崎はいきなり会社をやめました。
 そして、そのとき私に一番必要だと思われるものを、すぐにそろえることにしました。
 それは、長編製作可能なDVノンリニア編集システムでした。
 でも、素人の若者がひねり出せる金、その範囲内でそろえねばなりません。
 どこにお金を配分するか、それに悩みました。

どこに重点を置くか

  1. DVキャプチャボード

     DVキャプチャボードの価格は、性能に比例します。この性能とは、画質のことではありません。IEEE1394(iLINK)でDVカメラからビデオを取り込む場合、画質は劣化しませんから、画質はカメラの方に依存します。キャプチャボードのの値段によって違うのは、アナログの入出力がついているかどうかということと、ドライバの性能です。

     PCでノンリニア編集する上で、大きい問題が2ギガの壁といわれる制限です。ビデオファイルはソフトウエア上の扱いの問題で、2ギガバイトまでの大きさしか基本的には作れないのです。2ギガバイトではDVの場合、約9分間のビデオしか扱えません。その壁を独自のドライバで超えている製品を使わないと、9分という制限はつきまといます。

  2. ハードディスクドライブ

     ハードディスクドライブ(HDD)の容量は、そのまま編集可能時間になります。しかし、安価なHDDでは十分な転送速度が出ないことがあります。DVの取り込みは毎秒4メガバイト強のデータ転送が途切れなく行われなければならないのです。

     今もっとも安価に入手できるIDE規格のHDDでも、ほとんどのものがこの転送速度をクリアしています。しかしながらIDE規格HDDの場合、データー転送はCPUに依存する仕組みになっているので、同時に起動しているプログラムが、突然CPUの処理能力を大きく使うと、十分な転送能力を発揮できなくなります。そうなると、データーの取りこぼしが発生し、最悪の場合キャプチャが中断することにもなります。

     その他にもHDDの転送能力が落ちる場合があるため、転送能力は高ければ高いほど保険になります。ギリギリの転送能力では、よっぽど気をつけないとデータの取りこぼしが出ます。お金に余裕があれば毎分7200回転のHDDで、さらにUW-SCSI規格のHDDにすればIDE規格ほどCPU能力に依存しないために安心感は強くなります。

  3. 本体PC

     本体PCは予算などの都合上、自作することにしました。市販PCよりリスクは高いですが、拡張性からなにからを自分で選ぶことができるのが魅力です。

     CPUは早いに越したことはありませんが、そのときのもっともコストパフォーマンスに優れたものを選ぶのが賢い方法だと思います。最新CPUと値ごろ感のあるCPUとでは、価格に50%の開きがあっても、性能に50%の開きはまずありません。

     メモリは多く搭載することができれば操作は快適となります。しかし、静止画像と違いギガバイトクラスのビデオをメモリ上で扱うことはできませんので、OSとビデオ編集ソフトが使うのに十分なメモリがあればよいでしょう。

     マザーボードは、できるだけ安定していて、相性問題の少ないものにするべきでしょう。そう云った情報は雑誌やWeb、niftyserveなどで集めます。なにより肝心なDVキャプチャボードと相性問題のないことが肝心です。

 上記の優先度で、資金を投入することにしました。

実際の選択

 私が選択したのは下記の製品です。

DVキャプチャボード

canopus DV-Rex M1

 正直、高価な買い物でした。でも、満足いく内容だと思っています。DV、デジタルオーディオ、アナログAVそれぞれ2系統の入出力を持ち、アナログビデオもDVデータ化して保存できます。ハードで圧縮展開できるため、プレビューもすぐにモニタに出力できる上、CPU能力をあまり必要としません。

 またドライバも優秀で、参照キャプチャ方式により2Gの壁を破っており、HDDいっぱいまでビデオキャプチャができます。そのほか、ボードにバッファを持っているため途切れなく連続再生することができる、など、至れり尽せりの内容です。

ハードディスクドライブ

VIDEOIBM DDRS34560UW x3
SCSI-H/Atekram DC-390F
SYSTEMIBM DHEA-34331 (E-IDE)

 IBMの毎分7200回転のHDD、容量4ギガバイトを3台購入しました。合計12Gで、50分強の取り込みが可能です。これをOSであるWINDOWS NTのツールでストライピングしてあります。ストライピングとは数台のHDDに分散して書きこむことによって転送速度を上げようというものです。これで、最低でも毎秒18MBの転送能力は出るようです。実際、ここまでの転送速度は不要です。これらをNTFSフォーマットで、12ギガバイトの容量を持つ1つのパーティーションとして使用しています。

 SCSIホストアダプターはtekramの物が安価であったため、これを使っています。SCSI端子にさまざまな機器をつなげる場合はadaptec社製の物を使うべきですが、今回はHDDのみため、tekram社製のもので十分だろうと判断しました。

 システム用には安いIDE規格のHDDを使っています。できれば、システム用HDDとビデオ用HDDは分けた方がいいでしょう。

 また、7200回転のHDDは、かなり発熱します。HDD用のFANを設置するなどした方がHDDの寿命を延ばすことにもなるようです。私はHDD用のFANで2台を冷却し、1台はケースファンからの風があたる様にしてあります。また、ビデオ用のHDDはすべて5インチベイに設置してあります。これも、冷却のためです。

本体PC

CPUAMD K6-2 300Mhz
MemorySDRAM128MB(CL2)
MotherBoardTMC TI5VG+
VideoCardcanopus PWR128P GTS(PCI)
CD-ROM24x IDE
SoundcardCreative SoundBlasterAWE64
OSMS-WindowsNT4.0

 これらを選択した理由を簡単に書きます。
 CPUは、買った当時、出たばかりの新しいCPUで、話題が集中していたためこれを選びました。これはオタク的な楽しみで、実際のところMMXペンティアムの200MHzぐらいでも問題はないでしょう。このCPUが安定して動くものをということで、マザーボードは一緒に購入しました。これらの組み合わせで、相性問題が出たことは、一度もありません。

 メモリはOSをwindowsNTにするつもりだったので、128メガバイトのものを選びました。Windows95に比べてNTの方がメモリの消費量が多いためです。また、WINDOWSはメモリからあふれたデータをHDDに退避する仕組みになっているのですが、これがキャプチャ中に行われるとデータ転送が中断する恐れがあるため、メモリは多い目に搭載しておいた方が無難です。

 ビデオは、DV-REXのビデオが確実にオーバレイできるものを選びました。AGP版を選んで相性問題が出るのがいやだったため、PCI版を選びました。
 CD-ROMはIDEでいいです。NTのインストールはCD-ROMだけでできました。
 サウンドカードはsoundblaster互換であれば、何でもいいと思います。

 OSはNTを使っていますが、これは安定性、ストライピングができる、という2点で選びました。NTを使ううえで重要なのは、ドライバがあるかどうかということです。windows95のように、接続されている機器を自動判別してくれたりはしないので、ドライバに注意を払う必要があります。

DVノンリニアシステム完成

 以上のような選択の末、DVノンリニアシステムは完成しました。
 特に問題もなく、あっけなく完成したという印象があります。
 ここにたどり着くまでに、webやniftyserveから多くの情報を得ました。一から自作する場合でなくても、機器についての情報については敏感になっておく必要があります。

 価格的には、中古車一台が買えてしまうようなものになりましたが、当時できる選択のなかでは、ベストだったのではないかと思います。DV-REX一点豪華主義といえるような構成です。

 この構成で今も問題なく動いていますが、パーツのロットなどによってうまく動かないこともありえます。機器のご購入はご自身の責任によって行ってください。

そして、

後は映画作るのみ。これが一番重要です。
<戻る>

ジオシティーズの入り口へ このコミュニティの入り口へ ご近所を訪問する